金尾散財衛エ門のエンターティメントは素敵だ!

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水俣病-その20年

 水俣病-その20年

 1976年・日本
 監督:土本 典昭
 43分


 この映画は、水俣病の存在が医学的に「発見」され(1953年)、これまで不当な差別に耐えてきた患者達が、地元の巨大企業「チッソ(当時の社名は「新日本窒素肥料(株)」、以下社名は「チッソ」と明記)に対し、長年にわたる苦痛に対して謝罪を要求して裁判闘争を起こした、患者達の苦難に満ちた足取りをたどるドキュメンタリー映画である。
 水俣病の原因は、工場創設以来「チッソ」が工場排水を垂れ流し続けた事に原因がある。この工場ではアセトアルデビド、合成酢酸を生成していたが、その過程で大量の水銀を吹くんだ工場排水を、無処理のまま有明海に垂れ流していた。工場は不知火海だけでなく、そこに生息するプランクトン、プランクトンをえさにする魚、そしてその魚を食用にしていた人間に、取り返しのつかない悪影響を与えたのである。
 水俣病の存在が公式に確認されたのは1953年だが、それに近い症状は戦前に確認されていた。1940年、イギリス人のハンターとラッセルという人物が、農薬工場で有機水銀中毒になった、工場労働者4人の症例を報告している(ハンター・ラッセル症候群)。翌年11月には、水俣病と疑われる最も早い患者の発生が確認されている。
 水俣病の発生が確認される直前、地元の人は不知火海の魚介類が死んで海面上に浮き上がり、猫があやしい行動を繰り返したあげく、発狂して不知火海に飛び込む様子を何度も目撃している。振り返ってみれば、ネコが発狂して海に飛び込むくらい、「チッソ」水俣工場周辺海域の汚染はかなり進んでいたと言うことである。
 症例が確認される以前は原因がわからないため、地元では「伝染病」の一種だと思われていた。水俣病患者が出た世帯は、地域から差別の対象になり、日常生活もままならない状態に追い込まれた。学校でも、教員が率先して患者を差別した。患者は、どんどん精神的に追い詰められていった。
 1957年、患者達は団体を作り、熊本県と国に対して原因究明とチッソの責任を求める行動をし始める。しかし県・国とも原因究明には消極的であり、「チッソ」は責任すら認めなかった。医学的にチッソの工場排水が原因と認定されると、漁業ができなくなった漁民達は暴動を起こし、会社に謝罪を要求する。補償を要求する患者達に対して「チッソ」は、わずかばかりの見舞金を支給しただけで、しかも今後症状が悪化してもチッソには関係ありませんという一文を認めさせるという、あまりにも理不尽なものだった。にも関わらず、日常生活で受けた諸々の差別と、高額な医療費で心身ともボロボロになっていた患者たちは、チッソの言うがままに「見舞金」という名のはした金を受け取った。だが生活苦からいつまで経っても脱出できず、人間としての尊厳をこれでもかとばかりに傷つけられた被害者達は、ついに裁判闘争にうって出るのである。

 映画には、水銀中毒のために歩行はおろか、意思疎通もままならない患者達の姿が数多く出てくる。かろうじて歩ける、意思疎通のできる患者も、介護者の手を借りないと自由に歩行できなかったり、発音が不明瞭のために、なにを言っているのか理解できない。健常者は彼らの表情を注意深く観察し、ようやく患者と意思疎通をすることができる。ほとんどの患者は、床を這いつくばって移動する。家族が患者を立たせると、患者は立つことはできても、歩くことができない。まるで赤ん坊のようである。亡くなった患者を解剖したところ、彼らの脳はスポンジのようにスカスカになっている。脳というのは他の臓器と違い、失われた機能が元通りになったり、他の部位が代行するということがない。そのため、患者達は残りの人生を、重い後遺症と共に歩まなければならないのである。
 支援者の力を借りて、患者達は経営陣との交渉に臨む。しかし彼らは、患者達を目の前にしながらも、言を左右して決定的な謝罪の言葉を口にしない。裁判所の命令で慰謝料払うが、あまりに高額なので、ヘタをすれば会社は倒産する、それでもいいのですかと、恫喝めいたセリフを口にする会社役員の言葉に激高した患者達の怒りは爆発した。次々に役員の前で自分達が受けてきた苦しみを叫び、後遺障害の残る手足、脳障害のために移動も意思疎通もままならない家族を見せ、それでもあんたらは人間かとなじる患者達に対し、「チッソ」経営陣は厳しい表情で口を真一文字に結んだまま、その場に佇んでいる。ここを我慢すれば、自分達の描いていた展開になると言わんばかりの表情で…。
 映画の終盤、ヘドロまみれになった不知火海の画面が出てくる。表面上は何事もないように見えるが、海もヘドロも高濃度の水銀で汚染されている。その画面が、この問題の悲しさと根深さを強調している。
 患者の多くは、顔も実名も出している。30年前、ドキュメンタリー映画とはいえ、顔も実名を世間にさらけ出すのは、かなり抵抗があったはずだ。それができたのは、この映画の監督である土本典昭氏と患者・患者の家族ら関係者が、強固な信頼関係があったからこそである。その土本監督ですら、この問題を取り上げた当初は、彼らから患者を見世物にするのか、安っぽいお涙ちょうだい劇をするのなら出て行け、よそ者になにがわかるなどと、かなり抵抗されたららしい。だが監督が何回も現地に足を運ぶうちに、患者・関係者も彼に信頼を寄せるようになった。そういう事実を頭の中に入れてこの映画を見ると、また違った見方・感じ方を得られるに違いない。

 最期に、この映画上映に先立ち、「明治・水俣展」実行委員会の方らかの挨拶があったので、その要旨を掲載する。

 主催者ご挨拶
 大森正之教授
 私が明治にやってきてから10年以上なる。私の小学校時代、クラスで50人の中にぜんそくが3~4人、六価クロムの患者が3~4人いた。我々は公害の中で育った学年だ。
 江東区は夢の島があり、そこにはハエがたかっていた。実家の前は魚屋さんだったので、ハエが飛び交っていてひどい状況だった。水俣病患者は私と同年代だ。言葉は悪いが、一歩間違えれば我々もそうなっていたのではないかと思っていた。そんななかで環境に興味をもち、親戚が滋賀で琵琶湖の汚染問題に関する研究をやっていたので、理系の学問を志した。
 自分自身は水俣の近くの街に調査に行ったくらいで、じっくりと腰を据えた調査はしていないが、これを機会に、神様からしっかり勉強しろといわれ、明治に来たと自分では理解している。
 本日は、明治が水俣病に関係する展示会をやる意義をしゃべれといわれたのだが、駿河台に文系学部が集中しているが、エネルギー関係の集中講義するようになったのは’94年頃だ。今はいろんな学部で環境関係の授業が増えている。これらの授業を受けている学生が、水俣病について知っているかどうかはわからないし、既存の科目も、現状に対応しきれない。私の所属している政経学部学部は、共通科目を設定している。そこでは弁護士や企業関係者を招いて、CSR関係の授業をしている。
この春からはじまる科目で、毎週木曜16:20分から開講している。関心を持っている人であれば科目履修生としてきてくれればいいと思っている。
 しかし、環境問題が学生色に認識されているとは言えない。環境経済学会で、大阪市立大学の宮本教授が
 「環境学栄えて環境滅ぶ」
ということを危惧しているという趣旨の発言があった。私から見ても、学生諸君が、環境問題に自主的に入っていこうという姿勢が見えない。私が宮本教授が環境経済学を教えたらいいのかと尋ねたらら、データーを公表することだといわれた。
 今年は明治を受験する高校生が早稲田を抜くことが確実で、学長は喜んでいるらしいが、私に言わせれば、そのカネをもっと水俣店展に回せばいいと思う。水俣病は日本で最初の公害病である。環境問題の原点に立ち返り、現実をくみ上げ、自分がこれから勉強することに位置づけて欲しい。若い人たちに旗手来ていただき、環境公害で苦しんでいる人たちに手をさしのべたり、その努力を継続して欲しい。私自身もこの中に身を置き、学生諸君やスタッフと交流しながら、一連のプロセスの中で問い直してみたい。

 最期に、水俣病に関しては、フリーライター・奥田みのり氏のブログに詳しい記事が多数掲載されているので、そちらを参照して欲しい(「水俣病」で検索のこと)。

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Author:金尾散財衛エ門
音楽・美術・映画など、この世のすべての「美しいもの」と、憲法第9条に代表される「平和」が大好きな、世間一般でいう「ワーキングプア」に所属するしがない中年フリーター。
このBLOGでは、管理人が見たり聞いたりした映画・展覧会・CDの感想をつらつらと綴っていく。
※展覧会の記事は、過去の展覧会についても言及することをあらかじめお断りします。

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